すっかり朝晩は涼しくなり、秋の気候ですね。
今月は、初代国立劇場さよなら公演 として上演されている『義経千本桜』に出演させていただいておりました。
今回は二段目、三段目、四段目 を三つのプログラムに分けての上演。
同じ形で2020年3月に上演されるはずでしたが、コロナの流行によって公演は中止に。
コロナの影響を受け一番最初に公演を中止を決断した歌舞伎の興行だったのではないでしょうか。
ほぼ同じような配役で、そのリベンジとも言える今回、私もその時と同じ2役を勤めることができました。
まずはAプロの『鳥居前』の静御前。
赤姫の拵えですが、袖は中振袖で、ただのお姫様ではなく、白拍子であることが表されています。
明治座で勤めた初役の時は同世代で勤めましたが、今回は先輩方とご一緒。
義経 が、隼人から錦之助の叔父にと、息子さんからお父様に代わっているわけです(笑)
初役の折に雀右衛門のおじさまに教えていただき、監修にいらした三津五郎のおじさまにも色々なご指摘をいただいた思い出があります。
鼓を必ず左手で持つことや、静 にとって鼓は義経 、忠信 にとっては親、そのかけ違いが作品の魅力であることなど、お役の骨格的な部分のお話は自分の中で大切にしなくてはと思う大事な物になっています。
昨年の3月に『鳥居前』の後段にあたる『吉野山・川連館』の静を勤められたことも少しでも活かしながら、通し上演の中で後に繋がる静御前 でありたいなと思いながら勤めさせていただきました。
そんな『鳥居前』の静を我が家の蝶也くんが研修発表会で勤めることになり、教えさせてもらいましたが、彼はもちろん、私自身「教える」ということがありませんから、非常に勉強になりましたし、そこから何かを吸収しなくてはとも思いました。
間違ったことできない!と思うと自分がやっている時、変に緊張しますしね。
いや、いつも間違ったっていいやと思ってるわけじゃありませんからね!?(笑)
懸命に、素直に勤めてくれてとても嬉しかったです。
蝶也くんは基本的には立役が多いですが、これを機に女方も勤めてくれたら嬉しいなと思います。
本当にお疲れ様でした!!
また、Bプロでは『鮓屋』のお里。獅童兄さんの権太で初役で勤めさせていただいた際にこちらも雀右衛門のおじさまに教えていただきました。
京妙さん、京蔵さん、先代のおじさまのお弟子さんお二方にも色々とお話をうかがいました。
維盛 一家を押し留める際に屏風ではなく行灯を使うのが京屋さんの型。
前掛けを行灯の上に掛けることで、殿上人の維盛 側が明るく、下々であり、日陰の身となってしまったお里 側が暗くなる、という意味もこもっています。
前半のウキウキした様子から、後半の切なく哀しいクドキと、コントラスのはっきりした娘役の大役で、骨は折れますがとても素敵なお役です。
6月に博多で久々に若葉の内侍 を勤め、今月弥助 をお勤めの梅枝兄さんのお里 を側で感じられた直後なのもありがたいことでした。
さてさて、来年10月に建て直しに入るため一旦閉場する国立劇場。
吉右衛門のおじさまが毎年出演なさっていたこともあり、私も一年のうちどこかで必ず出演していました。
ここ最近はご無沙汰で、大劇場には2019時11月以来の出演。
吉右衛門のおじさまは珍しい狂言や場面の掘り起こしのような事を国立劇場でなさっていましたから、そこで古典をほとんど一から作り上げる場所に一座できたことはとても勉強になりました。
新作を作る、という作業とはまた違うんですよね。
勉強といえば、国立劇場では研修発表会で『大蔵卿』の常盤御前 、『七段目』のおかる、『矢口渡』のお舟、『十種香・狐火』の八重垣姫 と、女方の大役を四つも経験させてもらいました。
本当にありがたいことで、今の自分があるのもこうした得難い経験のおかげだと感じています。
そんな国立劇場は、珍しい作品の復活や実験的なことに加え、研究や勉強の場としての機能も色濃くあり、鑑賞教室など歌舞伎を広める大切な役割も果たしてくれていた劇場です。
そんな劇場が一時失われることになるわけで、寂しいという感傷だけでなく、一時的とはいえその存在の消失の影響は計り知れません。
劇場が一つ減るということは、単純に考えて公演の数が減ることに繋がるわけですから、それも歌舞伎界にとっては痛手と言えますよね。
とはいえ、老朽化による建て直しは不可避なわけですから、新たな国立劇場が素晴らしい物になることを期待し、その舞台に立つことを楽しみに研鑽を積んでまいりたいと思います!
あ、来年の閉場までにまだ出るかもしれないか……(笑)
そして、今月を終えますとしばらく私は古典歌舞伎はお休み。
新たな挑戦として12月に名古屋で、1月に池袋にてジロドゥの『オンディーヌ』で主演のオンディーヌ のお役を勤めさせて頂きます。
そのお稽古や映像のお仕事で11月〜1月までは歌舞伎はお休みですし、2月からは新作歌舞伎『FINAL FANTASY Ⅹ』のお稽古、3月から4月にかけて公演が始まります。
自分自身今までなかったような動きで、どうなることやら、戦々恐々としていながらも、どこかワクワクしている部分もあります。
古典を離れることに対しての抵抗や寂しさ、心配や恐れは強くありますが、今この時にしかできないこともあろうかと飛び込んでみることにしました。
これまでは私を目当てでなくても、歌舞伎座や国立劇場など、普段の歌舞伎興行に来ていただくだけでご覧頂けたわけですが、こういうことになると、私自身を観に来てもらわなくてはならない訳ですからね……
それも一つの大切な経験と、全てを自身の糧にできるよう進んでまいりたいと思いますので、是非とも皆様応援のほどよろしくお願いします!
見に来てくれないと、水回りのトラブルが起きるかもしれませんよ!!Σ(・□・;)
水の精だから!!(笑)
米吉でした
お忙しい中、投稿ありがとうございます。
『義経千本桜』は、大好きな演目の一つです。
テレビで観た事はありますが、一度、生の舞台で、通しで拝見したいとずっと思っていました。
コロナ禍ではありますが、国立劇場で拝見できました事、大変嬉しく思っております。
『鳥居前』の静御前では、鼓を必ず左手で持つ事になっているのですね。
また、Bプロの『鮓屋』は、屋号が異なると、型が異なり、意味があるのですね。
お里の、前半の楽しい雰囲気と後半の切なく哀しい雰囲気のコントラスがはっきりと表れていて、素敵なお役だなと思いました。
維盛を想う米吉さんのお里が、とにかく可愛いらしかったです‼︎!
しばらく古典歌舞伎はお休みなのは、寂しいですが、これからの多方面でのご活躍、楽しみです。
秋の気配が漂い始める季節の変わり目、どうぞご自愛下さい。
10月国立劇場は とおしで観劇しました。
国立は舞台写真の発売がないので、ここで 米吉さんのお里と静御前の写真を拝見して、10月の舞台を思い返しています。
10/18の 踊るさんま御殿、楽しく拝見させていただきました。宣伝した友人も、何人か見てくれて、米吉さんの素顔をしっかり覚えてくれたようです。(友人らに、歌舞伎座のブロマイドは、いつも見せています)
番組の途中、米吉さんのアップが少ないと、やきもきしましたが、終わってみれば、結構お話されていたと思いました。
ドラマ出演、そして、「オンディーヌ」と「F.F.X」、楽しみにしています。お体ご自愛下さい。