Loading

米吉ブログ

千姫

今月も本日千穐楽。

千穐楽の今日まで書かずにおりました今月のもう一役について、お話ししたいと思います。

 

今月の夜の部は大坂夏の陣を描いた坪内逍遙作の新歌舞伎の名作 『沓手鳥孤城落月』が、歌舞伎座では37年ぶりに『 奥殿  』の場から上演されています。
 

僕が勤めさせて頂いているのは大坂の大将、豊臣秀頼の妻であり、大坂を攻めている東軍大将徳川家康の孫娘でもある千姫のお役。

政略結婚で嫁いできて両家の板挟みとなり、姑である淀君に辛く当たられ、落城迫る中、多くの人の手引きで彼女はお城から落ち延びて行きます。

今回、玉三郎さんがこのお芝居を初めて手掛けられるにあたり、従来の演出から多くの変更があり、衣装も変わりました。

奥殿 』で僕が着ているこちらの打掛けも玉三郎さんが今回新たに選ばれたもの。

今までは『奥殿 』で千姫が着ていた打掛けと『糒蔵 』で淀君で握り締めている千姫の打掛けは違うものだったのですが、今回は脱がされ、そのまま握り締め続けているという分かりやすい演出に。

 

濃い朱色に豊臣の家紋である桐が大きく刺繍されている打掛けなだけに、効果的に感じられます。

  

こちらの紙挟みも玉三郎さんが選んでくださった物。

客席からは見え辛いかもしれませんが、桐の紋のあしらわれた豊臣家らしい素敵な紙挟みですよね。

紋と言えば、城を落ちる時にはこちらの紋にシフトチェンジ。

徳川家の葵の紋のあしらわれた被衣に身を包んでいます。

切り替えが早いと思われるかもしれませんが、この紋を身につけていれば東軍の人間に襲われる事もないからでしょうね。

 

 

さて、そんな千姫も今日で勤め納めです。

 

玉三郎さんの初役の淀君千姫を勤められたこと、本当にありがたい事だと感じております。

 

実はお稽古に入る前の、先月の千穐楽。

児太郎君と二人で玉三郎さんにお稽古をして頂いたんです。

そこで、従来の形から演出を変更した理由や、この芝居と淀君の捉え方などを伺い、千姫についてもこういったことを仰っていました。

 

まず、千姫は運命に流されている女性であるものの、幼くとも豊臣家の正室なのだから、何にも知らない弱々しいお姫様であってはいけないということ。

 

また、秀頼とは政略結婚である物の上手く行っていて、淀君千姫も良好な嫁姑関係を築いていた筈で、怖くもあるけれど、淀君の気持ちもきっと分かっているのではないか。

 

そして、淀君や落ちゆく城から逃げるのではなく、祖父 家康に豊臣家の人々を助けてくれと懇願するために城を出るのだと。

 
お稽古前に教えていただいたこれらの千姫考を拠り所として、少しでも近づける様に一日一日を勤めて参りました。

 

もちろん、毎日微に入り細に入り色んなご指導を頂き、その上、出の前に袖で芝居に対する心構え等、色々なお話をしてくださいました。

本当にありがたく貴重な経験をさせて頂けたと感じております。

  

 

奥殿 』の場の様な雨の降る千穐楽の今日。

教えていただいた事を一つ一つ思い出し、最後の千姫をしっかりと勤めあげたいと思っております。

 

 

 

 

米吉でした。

67回目!

◇採用情報◇

関連記事

  1. おおきに大阪。

    2015.07.27
  2. お局さま

    2021.05.26
  3. 末広がり

    2020.12.15
  4. 討ち入り!

    2016.12.14
  5. 舞鶴さん

    2021.02.23
  6. 浅草の役々

    2015.01.20

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (10)

    • みつき
    • 2017年 10月 25日

    千秋楽おめでとうございます!
    10日ほど前に夜の部見に行かせていただきましたがもう千秋楽とは、、早いですね

    玉三郎さんの初役と聞きとても楽しみにしていた演目です。
    淀君の心が乱れていくというか、どんどん崩れて行く淀君に涙が止まりませんでした。

    米吉様の千姫と淀君のやりとりも鳥肌が出るほど素晴らしかったです。
    児太郎さんが舌を噛んで自害するシーン、一瞬にして口から血が流れていてびっくりしました。あれは血糊ですか?顔彩でしょうか?

    毎日公演があるからこそ日に日に演技が少しずつ変わって行くというのは歌舞伎の良いところですよね。(仁左衛門さんのでてらっしゃったテレビで顔も変えていました、、)
    初日と千秋楽、二度も見に行けたらその変化にも気づくことができ、今は学生なので金銭的なこともありほとんど1回ずつしか行けませんが、将来はそのような楽しみ方もしてみたいなと思います!

    来月は獅童さんと巡業ですね!
    巡業ブログも楽しみにしてます
    だいぶ寒くなって来ましたのでお体には気をつけていってらっしゃいませ

    • お陰様でどうにか千穐楽まで勤め上げることが出来ました。
      毎日肌で感じながら勉強することができて、本当にありがたかったと感じております。

      常盤木の血糊は裏でこっそりつけています。
      どうやってつけているのか、何をつけているのかは企業秘密という事で….

      また巡業に出ましたら、こちらで色々とお伝えしていきたいと思っております!

    • とみぃ
    • 2017年 10月 26日

    ご無事の千穐楽、おめでとうございます。
    被衣の葵は気づいていたけれど、濃朱色の打掛けの桐の紋様は落としてしまいました。舞台映えする朱赤に気を取られ過ぎました。
    紋の意味も、言われみれば納得。知って見るのとそうでないのは大違いですね。やっぱり歌舞伎は奥が深い。
    それにしても、玉三郎さんの淀君、心が崩壊していく様は怖かったです。お芝居だとわかっていても、あの目で睨まれたら、絶対にすくんでしまいます。
    そんな方からの教えをたくさん吸収して、いろいろ考えて、ますます磨かれた米吉さんが楽しみです。

    25日は歌六さんの大岸頼母を拝見しました。
    水右衛門の憎々しさに対する優しさ。最後は大喝采でした。
    天皇皇后両陛下がご観覧されていて、私は初めて実際のお姿を拝見しました。
    つくづく良い日に行けたと思います。

    私の歌舞伎浸けの遅い夏休みは終了。
    来月は巡業でお待ちしております。地元2カ所である公演での再会を楽しみに、仕事に励みます!

    • お陰様でなんとか千穐楽まで勤め上げることが出来ました。
      ありがとうございましたm(__)m

      桐の模様も何となくくずれていて、良く見ないと分からないかも知れないですね。

      この経験を糧にして少しでも前進して参りたいと思います。

      丁度天覧の日に国立劇場をご覧になったんですね!
      とても貴重な経験をなさったんですね。
      何だか羨ましい感じがします。

      巡業先でまた、お目にかかれますのを楽しみにしております!

    • はるか
    • 2017年 10月 26日

    米吉さん。今日も1日お疲れ様でした。
    そして千穐楽おめでとうございます。歴史に疎い私でも千姫は存じ上げております。少しでも背景を知っていると歌舞伎はさらに楽しめそうですね。
    来月はやっとやっと米吉さんの舞台を拝見できます!ずっとずっと楽しみにしておりました。東京に比べるとやはり南に行くにつれてまだまだ暖かいと思いますが気温差で体調を崩されないように、インフルエンザも流行ってるのでお気をつけていらっしゃってくださいね。

    • お陰様でどうにか千穐楽まで勤め上げることが出来ました。
      ありがとうございました!

      やはり実在の有名な人物を勤めさせて頂くというのは何とも言えない気持ちになりますね。

      来月久々にお目にかかれるのを楽しみにしております!
      体に気を付けて旅を楽しみながら勤めていきたいと思います(^ー^)

  1. お疲れさまでした。

    また、千姫様のお衣装の解説もありがとうございます。
    読ませていただく前に、写真で桐の紋様が見て取れましたので、「あぁ、なるほど~」と思って読み始めました。

    で…落ちて行く時は葵の紋様。

    判る人には判る演出ですね。
    そんな細部までのこだわりには、ただひたすら敬服するばかりです。
    玉三郎さんは、ホントに何から何まで造詣が深い方ですね。さすが人間国宝。

    観劇の際は、やっぱり前の方の席でも、
    お衣装を良く観たいのでオペラグラスは持って行きますが、動きのある場合はなかなか難しい時もありますので、こうしてブログで公開して頂けるのは嬉しい限りです。

    千姫様や淀殿の人となりの解釈も、
    色々ありますが(好きな人物なので、色々読み漁りました)
    私が一番好きな人物像でした。

    お忙しい中、ブログの更新、ありがとうございました。

    • お陰様で千穐楽まで勤め上げることがここができました。
      ありがとうございました。

      折角の特徴的な衣装でしたので、こうやって皆様に写真でお目にかけることが出来て良かったです。
      どうしても動きや照明などではっきりは見えないことも多いですからね….

      今後もなにかありましたらお目にかけたいと思います。

      やはり、実在の人物を演じるということは何とも言えない気持ちがいたします。

      また巡業中も折を見てブログを更新していきたいと思います。

    • chie
    • 2017年 11月 01日

    巡業の初日おめでとうございます。
    そして、獅童さんの復帰おめでとうございます。ことさらに目出度いですね。お天気も晴れて良かったですね。

    沓手鳥孤城落月、初めて観る演目でした。初回より、二度目に観たときの方がそれぞれのお役の気持ちが心に深く深く入ってきました。とても感情表現の繊細な舞台でもの悲しい気持ちになりました。
    最初は、千姫のいたぶられて、耐え忍ぶ姿が印象的でした。でも、再度観て千姫は、淀君を決して嫌いに思っているわけではなく、お気持ちは、同じなのだなあ、その気持ちの中で逃げて行くのだなあと思いました。紋を変えるのも必死のことなのでしょう。
    淀君の心の振れ幅、正気と狂気を観ながら、その周りの人々の心情もまた心に響きました。

    玉三郎さんとのお話、お衣装のこと細かく教えていただき、とてもうれしいです。思い返しながら、読みました。薄暗い中でしたが、それによりさらに衣装の美しさが際立つように感じました。玉三郎さんの舞台は、どこを切り取っても絵になるような美しさがあって、感動します。
    米吉さんにとって得難い経験になりましたね。

    巡業のお里楽しみにしてます。
    長旅になりますので、お体には、お気をつけくださいね。美味しいものを召し上がって、旅も楽しんでくださいね。

    無事に千穐楽を迎えられますように。

    • まずは無事に初日を迎えられ嬉しく思っております。
      兄さんもお元気そうで何よりでした。

      先月の千姫では本当に得難い経験をすることができたと感じております。
      肌で感じるとでも申しましょうか、大先輩と一緒の舞台に立つことは本当に貴重なことで一番の勉強ではないでしょうか。

      これからも、そういった経験を大切に勤めて参りたいと思っております。

      巡業先でお目にかかりますのを楽しみにしております!

人気の投稿

PAGE TOP