新型コロナウイルスに振り回され始めてから、かれこれ2年が経とうとしています。
歌舞伎座の公演にも多大な影響を未だに及ぼしており、お客様にもご不便をおかけしている日々がそんなにも続いているのかと、気の遠くなる思いです。
さて、今月は第3部において『鼠小紋春着雛形ー鼠小僧次郎吉ー』にて杉田の娘 おみつ を勤めさせて頂いております。このお芝居は音羽屋の家に縁ある演目ではありますが、実に28年ぶりの上演です。
私の役は鼠小僧 が金を盗む稲毛家の組頭 杉田主膳 の娘で、辻番の与惣兵衛 の息子、与之助 に片思いする娘さんです。
歌舞伎に出てくるお嬢様あるあるで、大変恋に積極的(笑)
黙阿弥全集を紐解きますと二人きりで話す場面もあり、与之助 とは幼馴染で寺子屋友達のような関係で、男の方も憎からず思っている様子が見て取れます。
身分が違うとお嫁さんにはしてもらえないのか、なんて直接言ったりするんですから(笑)
そんな恋する与之助 がお縄についてしまい、居ても立っても居られなくなった おみつ。
どうにかして会えないかと家を飛び出し、偶然出会った鼠小僧 の義母で悪人のお熊婆さん に、男に会わせてやると騙され、家に連れてこられた上縛られてしまいます。
その時に簪を落としたことでおみつの居所が知れ、助けられることになりますが、その簪の紋は裏梅 。
初演の際に成駒屋の役者さんがなさったからなんだと思います。ですので、見えないとわかっていますが、前の場面の簪も、日頃使っている我が家の家紋の揚羽蝶
ではなく、裏梅を挿してるんですよ!
人様の家の紋の簪を挿すなんてまずないことなので、新鮮です(^_^)
乳母日傘ではありますが、それほど大家の娘ではないので、前回の上演の衣裳より振袖の丈を短くしてもらいました。
曾祖父が勤めており、その時の写真が中振袖を着ていたので、それにならった形です。
そんなこのお芝居は、鼠小僧 にまつわる因縁が絡まり合っています。
鼠小僧 が金を盗んだ罪科が、知らぬとはいえ実の父や弟の与惣兵衛 親子にかかり、盗んだ金をやった新助 は実は妻 松山 の従兄弟……
と、繋がる縁が知らず知らずの内に鼠小僧 を縛り上げるのです。
付け加えるならば、鼠小僧 がお金を盗んだ夜、居眠りしてしまう茶坊主とともに夜番をしている侍の一人が菊史郎さんが勤めていらっしゃる、おみつの父親、杉田主膳 。
つまりは、弟に想いを寄せている娘の家にまで因果が巡っている、ということになのかもしれませんね。
と、考えるのは深堀りのし過ぎかもしれませんが、天下の黙阿弥のことですから、そんなことも考えて書いているのかもしれません。
今こうして生きている中でも、知らないだけで遠い血の繋がりがある人や、先祖と縁のある人とすれ違ったり出会ったりすることも、ないとは言えませんものね。
『カムカムエヴリバディ』のるい・ひなた親子と赤螺家のように!(笑)
米吉でした。