僕の嫌いな季節の到来に閉口している今日この頃です。
今月は久々に歌舞伎座に出演させていただいています!
まずは『傾城反魂香』。
今回は常日頃よりよく上演される「将監閑居 」(いわゆる「吃又」)に加えて、その続きにあたる「又平住家 」が53年ぶりに上演されています。その場に登場するのがこの銀杏の前 というお姫様。
「吃又」では雅楽之助 の注進でこの姫の危機が知らされ、彼女を救うために将監 は悩み、修理之助 を向かわせ、又平 も救いに向かって功を立てたいと願い出ます。
そんな大騒ぎしてみんなで助けようとしていた姫君、あっさり自分で監禁先を抜け出して又平 の家に落ち延びてきます。しかも、大切な御朱印まで奪い返して……!
全く歌舞伎らしいご都合主義です(笑)
以前、「吃又」の前段に当たる「高嶋館 」が上演された際にも勤めたことがあり、どちらの場面でも勤めた珍しい役者となりました。
「高嶋館 」では「吃又」で消される虎を描いた狩野之助元信 に求婚し、そのために腰元に化けるなどの計略を用いるなかなか強かなお姫様。
そんなお姫様だから、意外とあっさり逃げ出せたのかな?(笑)大津絵が飛び出てきて舞踊仕立てに立ち回る華やかな「又平住家 」。
そうした趣向を楽しんでいただくのは勿論ですが、六角家のお家騒動、という本筋を担う姫君ですので、この人を守るために皆が尽力しているんだという説得力を持たせるお姫様として勤めたいと思っています。
そして、昼の部の打ち出しの『扇獅子』で芸者を勤めさせて頂いております。『扇獅子』は日本橋の芸者衆のために明治頃に書かれた作品で、清元の文句も日本橋辺りの四季を描いた内容。壱太郎兄さん、新悟兄さん、種之助、児太郎くんと同世代が打ち揃って芸者の拵えで踊っております(^ ^)
振り付けも当て書きならぬ、当て振りで、藤間のご宗家が各々の普段の性格や関係性を組み込んで振りをつけてくださいました。
玉子色の着付に白の献上の帯を柳に締めて、いわゆる芸者の「出の衣裳」というやつです。
黄色、じゃないんです。こういうのは芝居では玉子色と言うんです。
今回、『扇獅子』としては初めて、後半は獅子の赤毛を着けて毛振りをしています。
芸者が獅子の精になる、と言うことではなく、いわゆる「俄 」として芸者が獅子毛を着けて毛振りをお見せするという趣向になっています。
ですので、化粧も変えずそのままで、優雅に品よく、芸者さんの技芸の一つという心持ちでお目にかけたいと思って毛を振っております。
『扇獅子』では久しぶりに福助のお兄さんとご一緒です!
先月の『御贔屓繋馬』、来月の『吉原狐』とお兄さんが勤められたお役にご縁が続いているので、そこも含めてとても嬉しく思っています。
今回、お兄さんの獅子毛にだけ毛の中に鬢があり、芸者が獅子毛をかけている風情が色濃くなっているんですよ。
お客様に晴れやかな気持ちで劇場を後にしてもらえるよう、華やかに勤めたいと思います!
当初、昼の部の打ち出しには『夕顔棚』が上演されるはずでしたが、左團次のおじさんのご逝去により演目が差し替えとなりました。
この場を借りましてご冥福をお祈りするとともに、泉下にいらしたおじさんへ心よりお礼申し上げたいと思います。
大きくて、暖かくて、可笑しくって、格好いい、本当に素敵な偉大な先輩でした。
合掌
米吉でした
六月大歌舞伎、花道脇のお席で観劇しました。「傾城反魂香」銀杏の前:米吉さんの登場場面は、花道では被衣でお顔が隠れていて、少し残念でしたが、次の(花道を通られる)機会を楽しみにしていました。又平住居、襖から大津絵が抜け出して踊り、その後 銀杏の前も再登場し、大勢で舞うさまはとても華やかでした。
「扇獅子」の芸者:米吉さんは、玉子色の着物姿がとてもお似合いで、以前よりほっそりされたように見えました。
花道で、児太郎さんの毛振りが自分の左肩にバサッとかかって、「あら、縁起がいいのでは!」と喜んでいたら、2列前の小柄なご婦人の頭に、米吉さんの毛振りが、バサッとかかって、羨ましくなりました。千秋楽まであと2日、頑張ってください。