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米吉ブログ

玉衣姫

 


 

来月の『風の谷のナウシカ』のお稽古等でバタバタしている内に、本日千穐楽となってしまいました。

今月は国立劇場において『孤高勇士嬢景清』に出演させていただいております。

元々『嬢景清八嶋日記』から【花菱屋 】【日向嶋 】の二つの段を先代の白鸚のおじさまが、文楽の方々とご一緒に歌舞伎化なさっていて、吉右衛門のおじさんも『日向嶋』を二度手掛けられています。

今回は上記二つの段に加え、『大仏殿万代石楚』という作品と『嬢景清八嶋日記』を掛け合わせて再構成されたものです。

私が勤めさせて頂いたのは、源頼朝 の妻 北条政子 の妹 玉衣姫 源氏に縁がありながら、平家の一門である平知章 と恋仲になり、許嫁となっていました。
そんな恋しい男とは源平の合戦 で離れ離れになり、しかも知章 は討死。

そして源氏が勝利した後、頼朝 の情けで知章 の写経した一巻を賜り、尼となってその菩提を弔うために一巻を手に須磨寺へと向かって行くことになるのです。ちなみに、このお姫様は史実にいらした方ではなく、この悲恋もお芝居のなかでのお話です。
とはいえ、そんな風に戦によって散らされた恋は古今を問わずあるものなんでしょうね……

拵え自体は先月の銀杏の前 と同じようですが、頭が根取りの下げ髪 ですから、少し雰囲気が華やかになっているかもしれません。

 

実はこのお姫様が出てくる場面は、今回新しく作られた場面なんだそう。

原作の方では、お話は戦の最中から始まります。

愛しい 知章 の後を慕い、乳母夫婦を伴い遥々戦場に赴いた玉衣姫 は、知章の父である知盛 に許されて、手傷を負った知章と共に乳母の里へと落ち延びていく……

という筋立て。
その後は、落ち延びた先に詮議が来る、詮議に来た人と匿っていた人が実は親子、匿っていた人が申し訳に切腹、身代わりに別人の首を使う……
などなど、時代物のお決まりとも言える展開が続きます。

その中で景清 の『日向嶋』の件を経て、最終的には何故か知章 義経 の役が入れ替わった形で、来年一月の歌舞伎座でも上演される『五斗三番叟』と同じ内容になるという、大変壮大な物語になっていました( ̄□ ̄;)!!

 

こういった書き替えられた新しい場面や、記録の残っていない場面の上演などで古典を新しく作っていくという経験は、本当に得難く、ありがたいものです。

いつもに増して自分の引き出しの少なさや適応力の低さを如実に痛感することになるんですが……(・・;)

その上で、上演が重ねられている作品のお役達がどれだけ洗練され、無駄がなく、良くできた作りになっているのかも実感することができています。

難しいことですが、それを踏まえて古典のお役を学び、作る際にはその役々に勝らずとも劣らないように作っていかなくてはなりません。

そんなことを改めて考えながら、最後の一回しっかりと勤めたいと思います!

 

米吉でした。

◇舞台中継情報◇

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コメント

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  • コメント (2)

    • chie
    • 2019年 12月 02日

    序幕の玉衣姫の場面、新しく出来たところだったのですね。玉衣姫、好きな人への想いがしっかりと伝わってきました。序幕のみのご出演でしたが、とても華やかな役どころでしたね。
    舞台を拝見して、筋書や米吉さんのブログを読んだりすると、文楽もやっぱり観劇しとくと、またより楽しめたかもしれないなあと思いました。いろいろと相互比較してみたかったです。 
    歌六さんの頼朝のきりっとした姿がとても格好良かったです。吉右衛門さんの景清のやるせない思い、娘への気持ちをとても感じてぐっときてしまいました。

    12月の新作歌舞伎もどのようになるのか、衣装も世界観も含めてとても楽しみにしております。
    米吉さん、寒さが増してきましたので、お体には、お気をつけくださいね。

    • 当サイトの管理アプリがアップデートともにうまく通知がされ無くなっておりまして、お返事が大変遅くなりまして申し訳ありませんm(_ _)m

      国立劇場の復活演目はそのままというわけにはいかず、色々と手を入れて上演している形が多いですね。
      文楽の方でも上演が無い作品も多数ありますし、古いものを掘り起こして上演するのは骨の折れることなんだと思います。

      今月はまっさらな所から新しい物を創造するという、それとはまた違う骨の折れ方をしておりました(・・;)

      やはり練り上げられた古典の出来の良いことには感服しきりですし、我々の大きな財産だと感じています。

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