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米吉ブログ

お局さま


 

緊急事態宣言で公演を中止しておりました歌舞伎座も一週間遅れで初日の幕を開け、何事もなく後2日で千穐楽を迎えられそうでホッとしております。

今月は『鏡獅子』の局 吉野 のお役を勤めさせて頂いております。

打掛を羽織り、眉を剃ってお歯黒をつけたお局様。鏡獅子』はお正月の江戸城大奥での余興ということになっておりますので、この吉野様 も江戸城大奥で働く奥女中ということになります。

御小姓の弥生 の手を引いてくるときには打掛を脱いだ姿で。
この吉野 と、一緒に出ている老女 飛鳥井 のお役は、弥生 の手を引いて連れてくることから、“手引き”と呼ばれているんですよ。

そんな手引きのお局様、『椎茸髱しいたけたぼ かたはずし』という滅多にかけさせて貰えない鬘をかけております。

椎茸髱たぼの形、片はずしまげの結い方です。

椎茸髱とは襟足近くの髱と言われる部分をカチカチに油で固め、少し反り返らせた形のもの。後ろから見ると独特な形が分かりやすいですね。

髪の毛を落としたり、乱したりすることの無いようにしていた、御殿に勤める女性に用いられます。
と言っても、いいお役にしか用いられず、『道行』のお軽 や『かさね』の累 なんかが 椎茸髱です。

片はずしは、『熊谷陣屋』の相模 や『八・九段目』の戸無瀬 など武家女房や奥女中の髷の結い方。
こういった格式高いお役のことをズバリ「 片はずしのお役 」という言い方をするほど代名詞的になっている言葉です。

いま例えで挙げたお役は髷の結い方が文金高島田であったり、髱の形が丸髱であったりするのですが、

この2つが合わさっているのが今月の鬘。この2つが合わさりますと『先代萩』の政岡 や『鏡山』の尾上 など、立女形の大役がかける鬘になるんです。
(ちなみに、敵役の八汐 岩藤 もこの鬘です…)

次にこの鬘をかけさせていただくのはいつの日になることやら…(~_~;)
それ位、滅多にお目にかかれない物なんです!!

 

さて、初役で勤めさせて頂いている“手引きの局”ですが、実は“手引きの老女”の方は勤めたことがあるんです。
と言いますのは、数年前に藤間のご宗家がご自身の会で『鏡獅子』を踊られた際に、素踊りの形で勤めさせて頂きました。

今回、その 飛鳥井 をお勤めなのは萬次郎のおじさん。
そして、幕開きに一緒に並んでいらっしゃる男性陣は楽善のおじさんと彦三郎の兄さんと、「坂東家 」の皆さんの中に混ぜていただいております。

 

 

人数の多い「小川家 」の僕が、他の名字の皆さんに囲まれるなんて珍しいことですね(笑)

 

 

米吉でした。

◆公演中止のお知らせ◆

秀太郎のおじさま

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コメント

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  • コメント (6)

    • りお
    • 2021年 5月 27日

    局 吉野さんのお写真、あげてくださり、ありがとうございます。髷の説明もわかりやすく、勉強になります。
    舞台の米吉さんを拝見するのは、1月の「大磯の虎」以来でした。とても豪華な鏡獅子の舞台は、素晴らしかったです。
    今回は、座席のところどころに、お行儀よく観劇している小学校低学年くらいのお子様方がいらっしゃいました。勝手に、胡蝶さん方のお友達かな?と想像していました。
    去年の春以来、「休演になったら、その時はその時」という気持ちでチケットをとっていますが、チケットの日の公演があってホッとしました。
    この度は美術館が多数休館中のこともあり、寄り道なしで、上越新幹線で歌舞伎座だけ行って、とんぼ返りしました。来月も無事に公演が行われますように、祈っています。

    • お返事遅くなり、失礼しました!
      1月以来にご覧いただけたとのこと、ありがとうございましたm(__)m

      いつ公演が無くなってしまうか分からない世の中、生の舞台がますます一期一会のものとなっていますね。

      遠方から、本当にありがとうございます!

    • たけちゃん
    • 2021年 5月 27日

    お疲れ様のところ、ブログ更新、ありがとうございます。
    緊急事態宣言中、一週間遅れで、初日の幕が開き、何事もなく、明日千穐楽を迎えられそうで、大変嬉しく思っております。
    先週金曜日に拝見しました。
    大阪から伺いましたので、緊急事態宣言中で不安な気持ちでいっぱいでしたが、拝見している間は、その様な気持ちを忘れ、舞台を楽しむ事ができました。
    『鏡獅子』は、初めて観ました。
    『椎茸髱の片はずし』という、滅多にお目にかかれない物も拝見できましたので、本当に観に行ってよかったと思っております。
    米吉さんは、いつも的確で、無駄のない説明をされるので、とても分かりやすいです。大変勉強になります。
    私は、母と鑑賞しました。
    母は、やや高齢で、米吉さんのお役を分かってるかどうか心配だったのですが、ちゃんと分かっていたとの事です。
    私は、劇場で、米吉さんにお目にかかれた事だけで嬉しかったのですが。
    母は、物語の後半も、出てこられると思って、ずっと待っていたそうで。終演後、残念だったと言っていました^^;

    • お返事遅くなりました。
      お陰様で5月も無事に千穐楽を迎え、6月も初日を迎え何事もなく本日まで公演させて頂いております。

      遠方から本当にありがとうございますm(__)m

      幕開きだけでしたので、お母様には申し訳ないことをしました。

      このような時期だからこそ劇場にいる間だけでも、素敵な時間を過ごしていただけたこと、本当に嬉しく思っております。

    • chie
    • 2021年 6月 02日

    暑さを感じるようになり、夏の気配が近づいてきましたね。千穐楽も無事に終わり、本当に良かったです。
    米吉さんのこういうお役を拝見する機会は、少なく新鮮でした。萬次郎さんとの息もぴったりで、弥生に対してとてもいじわるな、でもおかしみのある楽しい場面でした。
    いつも拵えなどのお話ありがとうございます。観るときにあらためて、注目して楽しませてもらってます。

    胡蝶のお二人は、とても愛らしくて、見ているだけでうれしくなりました。菊之助さんの弥生もやっぱりとても素敵でした。

    インスタグラムに歌六さんの拵えのお写真ありがとうございました。歌六さんの正清、とても格好よかったです。
    吉右衛門さんのご復帰を待っていられるというのは、ニュースを聞いた時から考えると、本当にとてもうれしいです。

    来月の夕顔棚、とても好きな演目なので、米吉さんが里の女を演じられるの楽しみにしてます。

    • お返事遅くなりました。
      申し訳無いです…

      眉無しのお役は時たまありましたが、局のお役は初めてでした。

      先月の鏡獅子では家の芸として大切になさっている菊之助兄さんの鏡獅子に対する向き合い方を肌で感じられ、大変勉強になりました。

      先月は吉右衛門のおじ様の代役を父も無事に千穐楽まで勤められ、ホッとしていました。

      夕顔棚は季節感もあり、とても素敵な空気の流れている作品ですよね!
      劇場でお待ちしております。

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